動物介護士が解説|老犬が徘徊する理由は?考えられる原因や対策法
老犬となった愛犬が、徘徊するかのようにウロウロと歩き回る姿を見て心配になったり、止まらない徘徊を何とかしてあげたいと思っているのではないでしょうか。
実際に私の高齢の愛犬も寝ないで徘徊していたことがあり、さまざまな対処を行いました。
基本的に、老犬の徘徊は止めることがストレスになることもあるため無理に止める必要はありませんが、何かにぶつかったり転ぶなどでケガをする可能性があり、対策は必要です。
また、徘徊する原因によっては治療が必要な病気が隠れていることもあります。
そこで今回は、老犬が徘徊する原因や対策法について解説します。
老犬が徘徊する理由は?原因は病気や体調不良のことが多い
そもそも徘徊とは認知症の症状のひとつで、心理的要因などが重なることで起こります。
そのため、認知症以外では徘徊とは呼びません。
しかし、老犬は病気などが原因で徘徊のような行動をとることもあり、徘徊も徘徊のような行動も、傍からはウロウロと歩き回っているようにしか見えないため区別することは難しいでしょう。
また、病気の場合では動物病院を受診する必要があるため、しっかり老犬が徘徊もしくは徘徊のような行動をする原因を知っておくことが大切です。
不安やストレス
老犬が徘徊する原因のひとつに、不安やストレスがあります。
不安やストレスも、認知症によるものと老化による自然なものがあるため判断は難しいですが、ウロウロと歩き回ることで不安を紛らわせようとしているのかもしれません。
老犬になると、どんどん体のあちこちの機能が衰えるため、それまでできていたことができなくなったり、見えづらくなる、聞こえにくくなる、鼻がきかなくなるなど、不安やストレスを感じやすくなります。
また、「老犬だから」「寝ているから起こしたら可哀そう」などの理由で散歩を控えがちになりますが、散歩に行かないことでストレスとなってしまうこともあります。
ストレスを解消させるためにウロウロ歩き回るという行動が見られることもあるため、無理をさせない範囲で散歩に連れて行ってあげましょう。
てんかん発作を起こしていた
老犬が徘徊していると思っていたら、実は飼い主さんが気が付かないうちにてんかん発作を起こしていたということもあります。
てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作を起こす病気です。
脳全体が興奮した場合は「全般発作」で、体を反らしたり、手足をつっぱらせてガクガクと痙攣するなど、全身の発作が出るためわかりやすいです。
しかし、脳の一部が興奮した場合の「焦点性発作」は口をクチャクチャさせたり、顔面だけが痙攣したり、落ち着きがなくなるだけなど、飼い主さんがてんかん発作と気づかないこともあります。
■ 犬のてんかんの主な症状 【焦点性発作(身体の一部分だけ)】 ・顔面の痙攣 |
てんかん発作の前後にはウロウロと歩き回るなどの神経症状がみられることもあり、焦点性発作が起きたことに気づかなければ徘徊だと思ってしまっても不思議ではありません。
てんかんは、明らかな異常が認められない特発性てんかんと、脳腫瘍や脳炎、水頭症、頭部外傷などが原因の構造的てんかんがあるため、老犬に徘徊がみられたときは一度動物病院を受診することをおすすめします。
認知症
老犬が徘徊する原因で、考えなくてはいけないのが認知症でしょう。
犬の認知症は一般的に10歳頃から発症しますが、海外の研究では11〜12歳の老犬の28%、15〜16歳の老犬の68%に認知症の症状が現れたという報告(※1)もあるように、年を重ねるごとに発症リスクは高くなります。
認知症になると記憶障害や見当識障害が起こり、不安から徘徊をすることも多いです。
■ 見当識障害とは 少しずつ時間の感覚や自分の居場所がわからなくなり、さらに進行すると自分や飼い主さんに関する記憶がなくなる症状のこと |
また、老犬によっては認知症の周辺症状のひとつである「多動(動き回る)」の症状が出てジッとしていられなくて徘徊することもあります。
基本的に徘徊は、好きなように歩かせてあげて問題ありませんが、ずっと寝ないで歩き回る、勢いよく歩き回るという場合はほかの問題も抱えている場合もあるため、早めに獣医師にご相談ください。
老犬の認知症については、以下の記事で詳しく解説しています。
夜泣き=認知症?|老犬の夜泣きの種類と対処法 |
その他の病気
老犬のウロウロと歩き回る行動は、てんかん発作の前後や認知症だけでなく、ほかの病気でも引き起こされることがあります。
徘徊のほかに昼夜逆転や性格の変化など、認知症のような症状がみられることもありますが、重篤な病気が隠れていることもあるため、自己判断で決めつけずに動物病院を受診することが大切です。
■ 老犬の徘徊で疑われる主な病気 ・認知症 ・脳腫瘍 ・甲状腺機能低下症 ・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群) ・肝性脳症 ・椎間板ヘルニア ・変性性脊髄症 |
これらは、どの病気も適切な治療が必要で、治療を行わなければ悪化したり命にかかわることもあります。
また上記の病気には含まれていませんが、私の愛犬は肺炎で一晩中ウロウロと歩き回ることもありました。
このように、急に徘徊のような行動をするようになったときは体調に異変がある可能性が高いため、早めに動物病院を受診しましょう。
徘徊と間違われやすい病気
一般的に徘徊はウロウロと目的なく歩き回ることを指しますが、きちんと目的があったり、自分の意思に反してグルグルと回ってしまう場合は徘徊ではなく、ほかの病気の可能性があります。
■ 徘徊と間違われやすい病気 ・緑内障や進行性網膜委縮 など …急な視力低下や失明により、ニオイを嗅ぎながらあちこち歩き回る ・前庭疾患や中耳炎・内耳炎、脳の障害 など …平衡感覚に異常があり、真っ直ぐ歩きたいのに左右どちらか一方にクルクル回ってしまう |
平衡感覚に異常がある場合は、回る方向が一定で、回ってしまう方向に首を傾けていることが多く飼い主さんも気づきやすいです。
また、急な視力低下や失明では、「ニオイを嗅ぎながら」ということを意識して観察することで、徘徊なのか違うのかを判断することができます。
普段から呼びかけに反応するか、認知機能は正常かを観察しておくことで、認知症での徘徊なのかそうでないかを見極めやすくなるでしょう。
老犬が徘徊するときの対策方法
老犬が徘徊するようになると、いつまでも止まらない徘徊を心配したり、ケガや体力の消耗の心配が絶えないなど、飼い主さんにとっても負担となることもありますね。
ここでは、老犬が徘徊するときの対策方法について解説します。
動物病院を受診する
まず、老犬に徘徊が見られたときは、動物病院を受診しましょう。
認知症による徘徊なのか、病気などほかの原因があってウロウロ歩き回っているのかは、飼い主さんの判断できるものではありません。
また、動物病院を受診する際は、愛犬の徘徊の様子を動画に撮っておくことで獣医師の診断のサポートになり、より状態を把握してもらいやすくなります。
無理に徘徊をやめさせない
一般的に、認知症による徘徊は目的もなくウロウロと歩き回ることとされています。
しかし、徘徊している老犬自身は何らかの目的があって徘徊しているため、無理に徘徊をやめさせないようにしましょう。
徘徊は不安やストレスを解消させるために行われていることが多く、無理にやめさせることが余計にストレスを与えてしまうことになります。
また、もしてんかん後の行動であった場合は、やめさせようと刺激を与えることでてんかん発作を誘発させる可能性もあるため、基本的にはそっと見守ってあげることが大切です。
ただし、あまりにも止まらない徘徊や、激しい徘徊が見られる場合では、体力の消耗の心配やほかの原因が隠れていることもあり、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
老犬が寝ないリスクについては、以下の記事をご覧ください。
ケガをさせない環境を整えてあげる
老犬が徘徊しているときに、ぶつかってケガをすることのない環境を整えてあげましょう。
家具などの角やテーブル・椅子などの脚には、赤ちゃん用のコーナーガードやクッション材などでぶつかってもケガをしない対策をしてあげることをおすすめします。
実際に愛犬の1匹が認知症となり、徘徊をしていたときに、あちこちに頭をぶつけたり転ぶことがありました。
ひどいときは壁に勢いよく激突したり、勢い余って飛び降りたら危険な高さの場所に登り、そこから飛び降りようとするなどの行動がみられました。
その際には、あちこちに保護材を巻いたりクッションを置くなどさまざまな工夫が必要でした。
このように、認知症の老犬は時に危険な行動をとるケースがあるため、ケガをさせない環境を整えてあげることは重要なポイントです。
また、認知症になると狭い場所に入り込みたくなる傾向にあるため、自力で出てこられないような場所では、入り込めないように塞いでおいてあげましょう。
サークルなどで行動範囲を決めてあげる
可能であれば、八角形のソフトサークルやビニールプールなどで行動範囲を決めてあげるといいでしょう。
四角形のサークルは角にはまって動けなくなってしまうため、形の配慮は必要ですが、行動範囲が決まっていればケガなどのリスクが低くなります。
また、柔らかい素材のサークルのほうが、ぶつかったり、ぶつかった勢いでサークルと一緒に転倒してしまったときもケガをする可能性が少なく安心です。
ただし、私の愛犬もそうでしたが、周りが囲われていることでパニックを起こしてしまう老犬では、無理にサークルに入ってもらうことは危険なので、部屋の中の安全対策を徹底することをおすすめします。
日中に寝すぎていないか確認する
夜に寝ないで徘徊する場合では、日中に寝すぎていないか確認してみましょう。
老犬は睡眠時間を多く必要としますが、寝すぎることで夜に眠れなくなり、徘徊につながっていることも考えられます。
日中は、寝ていても適度に起こして遊んだり散歩に行くなど、寝すぎないように配慮してあげるといいでしょう。
老犬が寝てばかりいるときの対策は、以下の記事を参考にしてください。
動物介護士が解説|老犬が寝てばかりいるのは病気?注意点や気をつけてあげたいこと |
サプリメントを取り入れる
老犬が徘徊することを止めるための薬やサプリメントはありませんが、脳に必要な栄養を補ってあげることで徘徊が軽減されることはあります。
特に脳は酸化ストレスを受けやすいため、活性酸素から体を守るための成分が含まれた脳ケアサプリメントを取り入れることをおすすめします。
近年、脳細胞の健康維持に脳の神経幹細胞に働きかけて神経細胞の新生(分化)を促し、新規細胞の成長や維持に深く関与すると考えられている神経栄養因子という物質が注目されています。
その神経栄養因子のような働きをすることがさまざまな試験から明らかになった、「バングレン」という成分が含まれているサプリメントもあります。
■ 脳ケアにおすすめの成分 ・ポリフェノール(アントシアニン、グネチンCなど) ・神経栄養因子様化合物(バングレン) ・カロテノイド(アスタキサンチン、ルテイン、β‐カロテンなど) ・DHA ・ビタミンA、C、E など |
動物病院でも販売されている製品だと、より安心して愛犬に与えることができるでしょう。
実際に、徘徊する愛犬にグネチンCとバングレンが配合されたサプリメントを与えたところ、愛犬の体質に合っていたこともあり、夜間の徘徊や壁への激突などの悩みが解消されました。
食事から取り入れられる栄養素には限りがあるのはもちろん、老犬になると食が細くなる子もいるため、不足しがちな成分はサプリメントで効率的に取り入れられると良いですね。
認知症に対する脳ケアサプリメントの評価は高い(※2)ため、老犬になったら気になる症状がなくても脳に必要な栄養を補ってあげたいものです。
まとめ
老犬が徘徊するかのようにウロウロと歩き回ることには、さまざまな原因が考えられます。
原因を突き止め、適切に対処してあげることが大切です。
ただ、徘徊の原因が認知症であっても、それは愛犬が一生懸命に長生きしてくれている証であり、悲観することではありません。
加齢によって認知機能が低下することはすべての犬が経験することで、その程度や症状に違いがあるだけです。
おひとりで抱え込まずに、獣医師に相談しながら愛犬の徘徊に上手に付き合っていきましょう。
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<参考文献>
※1参考:National Library of Medicine「Prevalence of behavioral changes associated with age-related cognitive impairment in dogs」
※2参考:動物臨床医学「犬と猫の高齢性認知機能不全」
執筆者:高田(動物介護士)