動物介護士が解説|老犬のシャンプーの頻度は?注意点や負担をかけないポイントも
基本的に犬のシャンプーは月に1〜2回が目安ですが、体力が衰えてくる老犬ではシャンプーが負担となるケースがあるため、頻度やタイミングはしっかり考えてあげなければいけません。
シャンプーは汚れを落とすだけでなく、皮膚トラブルの予防や皮膚・被毛を良好な状態に保つなどさまざまな役割があります。
老犬になるべく負担をかけないためにも、シャンプーの頻度や自宅でシャンプーする際のポイントを知っておきましょう。
今回は、寝たきりになった愛犬や高齢の愛犬たちと暮らしていた動物介護士の私が、老犬のシャンプーについて解説します。
■ 保有資格 動物介護士 / トリマーペットスタイリスト 他 |
老犬のシャンプーの頻度は?状態によって異なる
子犬や成犬のシャンプーの頻度は基本的に月に1回が目安ですが、老犬は2ヶ月に1回の頻度を目安にします。
ただし、老犬のシャンプーの頻度はその犬その犬で異なり、必ずしも2ヶ月に1回ということではありません。
持病があって高齢でも月に1回シャンプーができる老犬もいれば、3ヶ月に1回が良い場合もあったり、そもそもシャンプー自体を行わない方が良い場合もあります。
そのため、老犬ではかかりつけの獣医師に確認しながらシャンプーをするタイミングを決めていくことをおすすめします。
老犬にとってシャンプーは負担が大きい!
人間でもお風呂やシャワーで体力を消耗するように、犬のシャンプーも体力が消耗されます。
さらに、もともと「身体を洗う」という習慣がない犬にとって、身体を濡らされたり洗われる、ドライヤーで乾かすといった行為はストレスでしょう。
若いうちは体力もあり、多少のストレスを感じても体調不良になることはありませんが、体力も免疫力も落ちる老犬では、シャンプーが大きな負担となってしまうこともあるのです。
実際に、シャンプー中に亡くなってしまう犬がいたり、シャンプー後に体調不良となってそのまま亡くなってしまう犬もいます。
これは、年齢に関係なくシャンプーできるような体調や状態ではなかったことが原因の悲しい事故ですが、老犬ではこうしたリスクが高いため、かかりつけの獣医師への確認が何よりも大切ということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
老犬のシャンプーで負担をかけないためのポイント6つ
近年、自宅で愛犬のシャンプーを行う飼い主さんも増えていますね。
ここでは、老犬のシャンプーで負担をかけないためのポイントをご紹介します。
① 体調が良いときに行う
老犬のシャンプーを行うときは、体調が良いときに行いましょう。
無理をさせてしまうと体調不良の原因となってしまいます。
すっと体調が安定しなかったり、重度の心臓病や呼吸器疾患などを抱えている場合では無理にシャンプーを行う必要はありません。
シャンプーができない場合は、ブラッシングをしてから濡れタオルで体を拭いてあげたり、水のいらないシャンプーなどで調子が良さそうな時にお手入れをしてあげましょう。
② できるだけ部屋の温度差をなくす
浴室や脱衣所、乾かすために使用する部屋など、できるだけ部屋に温度差がないようにしてあげましょう。
急激な温度の変化は血圧の乱高下を引き起こし、ヒートショックを招きやすくなります。
老犬は心臓をはじめとする内臓機能が弱っているため、温度差に注意が必要です。
人間では10℃以上の温度差があると特に危険とされており、温度差は2〜3℃以内にすることが理想とされています。
ヒートショックは冬場だけでなく夏場でも起こる可能性があるため、季節に関係なく温度差に配慮してあげることが大切です。
③ 滑り止めマットを用意する
浴室の床は滑りやすく老犬の足腰に負担がかかってしまうので、滑り止めマットを用意しましょう。
犬用バスタブを使用する場合でも、バスタブの中に滑り止めマットを敷いてあげると安心です。
④ お湯につからせ過ぎない
お湯をはったバスタブに浸からせてあげたいと考える飼い主さんもいるかもしれませんが、お湯につかることは体力の消耗を促進させたり心臓に負担がかかります。
そのため、老犬ではお湯につからせ過ぎないように注意しましょう。
つからせる場合も、ほんの数分にとどめておくことが大切です。
また、犬のシャンプーのお湯の温度は37〜38℃が目安ですが、老犬では35〜36℃と少し低めにすることで心臓にかかる負担を軽減できます。
⑤ 10~15分で終わらせる
老犬のシャンプーはできるだけ時間をかけずに手早く済ませることが大切です。
目安としては、10〜15分で終わらせるようにしましょう。
無理にシャンプーの後のリンスをする必要もありません。
パサつきが気になる場合はリンスインシャンプーなどを利用するといいでしょう。
また、毛の長い老犬では、全身を短めにカットしておくことでシャンプーの頻度を減らしたり、シャンプーにかかる時間を短縮できます。
老犬では「負担を最小限にする」ということが大切なので、バリカンカットも検討してみましょう。
(バリカンの使用は慣れていないと危険を伴うため、トリミングサロンや動物病院で対応可能かを確認しましょう)
⑥ 吸水性の良いタオルでタオルドライを念入りに行う
ドライヤーで乾かす時間を少しでも短くするためにも、吸水性の優れたタオルを使用してしっかり水分を取っておきましょう。
この際も、時間をかけすぎずに手早く終わらせることが大切です。
⑦ 乾かすときは胸から
体が濡れたままは体調不良の原因となるため、ドライヤーでしっかり乾かしてあげる必要がありますが、老犬を乾かすときは心臓のある胸の部分から乾かしてあげましょう。
乾かすときは上から下に向かって乾かすのが基本ですが、老犬の場合は胸やお腹を先に乾かしてあげることで冷えてしまうことを軽減してあげられます。
また、この時老犬の体から30ⅽm以上離した場所からドライヤーを使用することや、熱くなりすぎると火傷の原因となるため温風と冷風を交互に使用するなどドライヤーの温度にも注意が必要です。
⑧ 寒い時期などはトリミングサロンを活用する
寒い時期などは、トリミングサロンを利用しましょう。
トリミングサロンに行くことにストレスを感じる老犬もいますが、家庭用のドライヤーは乾かすのに時間がかかってしまい、身体が濡れている時間が長いと老犬の負担となってしまいます。
高齢になってからだと新規で利用することは難しくなるため、10歳頃から近くのトリミングサロンを定期的に利用しておくといいでしょう。
老犬では、動物病院が併設していたり、動物病院自体がトリミングのサービスを提供している場合だとより安心です。
実際、私が寒い時期に利用していたトリミングサロンは、寝たきりになってしまった愛犬はさすがに断られましたが、17歳や18歳の愛犬も様子を見ながら手早く済ませてくれました。
もちろん愛犬の性格にもよりますが、トリミングサロンを上手に活用することで体への負担を軽減してあげられることもあるということは覚えておいてくださいね。
寝たきりになった老犬のシャンプーの頻度は?
前章でも少し触れましたが、自力で立っていられない老犬や寝たきりの老犬はトリミングサロンを利用することができません。
寝たきりだからこそ身体を清潔に保ってあげる必要がありますが、寝たきりになってしまった老犬のシャンプーの頻度も、2〜3ヶ月に1回が目安です。
ただ、褥瘡がある場合、内臓疾患がある場合、汚れやすい場合など、こちらも老犬の状態によってシャンプーの頻度が変わるため、かかりつけの獣医師にその都度確認して行いましょう。
老犬のシャンプーの注意点
老犬のシャンプーの基本は、「無理をさせない」「手早く終わらせる」ですが、そのほかにも注意してあげたいことがあります。
ここでは、老犬のシャンプーの注意点を見ていきましょう。
動物病院が開いている時間に行う
老犬のシャンプーをする時は、何かあってもすぐに動物病院に行けるように動物病院が開いている時間に行いましょう。
シャンプー中はもちろん、シャンプー後の体調不良にも備えて、時間には余裕を持っておくと安心です。
お昼から夕方まで診察を行っていない動物病院も多いため、近くの動物病院の診察時間を確認しておくことをおすすめします。
愛犬の楽な姿勢でしてあげる
立っているほうが楽、座っているほうが楽、寝たままのほうが楽など、楽な姿勢は老犬によって異なります。
シャンプーをするときは愛犬が一番楽な姿勢で行ってあげましょう。
また、寝たきりの老犬の場合では、無理に立たせたりせず寝たままシャンプーをしてあげたほうが安全です。
実際に、私が寝たきりの愛犬(小型犬)のシャンプーをするときは、浴槽の床に滑り止めマッドを敷き、そこに寝かせてシャンプーをしていました。
寝たきりの中型犬や大型犬では、すのこなどを利用すると比較的洗いやすいでしょう。
この際、口の中や目や耳にシャンプーなどが入らないように注意してあげてくださいね。
ただ、自分で洗うことが難しいと思ったときは無理をせず、獣医師に相談したり出張トリマーなどを利用することをおすすめします。
場合によっては部分洗いだけにする
汚れてしまった体を洗ってあげたいと思っても、心身への負担を考えると老犬にこまめなシャンプーは適していません。
口周りだけやお尻周りだけ、足だけなど、室内でも可能な部分洗いで済ませてあげましょう。
部分洗いなら、ペットシーツを敷いた上で、蓋に数か所穴を開けたペットボトルにお湯を入れ、少量のシャンプーで洗う・洗い流すことができます。
普段から汚れやすい場所をこまめに拭いてあげたり部分洗いをすることで、全身シャンプーの頻度は減らすことができるので、日頃からこまめにケアしてあげましょう。
シャンプー剤は低刺激なものを使用する
老犬になると皮膚も弱くなるため、シャンプー剤は低刺激のものを使用してあげましょう。
合成界面活性剤よりも、アミノ酸系界面活性剤を使用しているもののほうが刺激が少なくて老犬にはおすすめです。
また近年は、水のいらないシャンプーなどでは、電解水のみといったものもあります。
肛門腺絞りなどは無理をせずに動物病院で行う
シャンプーの時に門腺絞りなどを自分で行っている飼い主さんもいると思いますが、年齢を重ねるにつれ老犬はお尻周りの皮膚も弱くなります。
老犬は肛門腺がたまりやすいので気が付いたら絞ってあげる必要がありますが、力を入れすぎると皮膚を傷つけてしまう恐れがあるので、動物病院で獣医師にしてもらったほうが安心です。
まとめ
老犬にとっても、シャンプーは皮膚トラブルの予防に大切なものです。
しかし、無理をさせてしまうと体調不良の原因となり、できる限り負担を少なくシャンプーを行う必要があります。
まだ若く元気な老犬であっても、油断は禁物です。
かかりつけの動物病院で、どれくらいの頻度でシャンプーを行えばいいかを確認しましょう。
また、持病を抱えている老犬では、通院時に獣医師にシャンプーをしても大丈夫かその都度確認することが大切です。
17歳の愛犬は不整脈などの持病も抱えていましたが、皮脂が多く皮膚トラブルを起こしやすかったことから月1回のシャンプーをかかりつけの獣医師から指示されていました。
このように老犬と言ってもみんな同じではないため、愛犬にとって最適な頻度やタイミングでシャンプーを行ってあげてくださいね。
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