愛犬の耳が聞こえない?確認方法や原因・対処法を動物介護士が解説

愛犬を呼んでも反応がなかったり物音に気づかないと、「もしかして耳が聞こえない?」と心配になりますね。
犬の聴力はとても優れており、人間には聞こえない音を聞き取ることができたり、静かな環境であれば1km先の音も聞き取れるといわれています。
しかし、加齢や病気などが原因で耳が聞こえにくくなっていたり、まったく聞こえない状態になっていることも。
そのまま放置すると愛犬の生活の質が下がるだけでなく、認知症のリスクにもつながるため適切に対処してあげることが大切です。
そこで今回は、犬の耳が聞こえているかどうかの確認方法や原因、対処法などを解説します。
| 【執筆者保有資格】
動物介護士、ペットフーディスト、犬の管理栄養士 他 |
もしかして耳が聞こえない?犬の耳が聞こえているかの確認方法

犬は言葉を話すことができないため、耳が聞こえないのかを言葉で確認することはできません。
また、片方の耳だけ聞こえないという場合は、生涯気づかれずにそのままになってしまう可能性も。
とはいえ、「耳が聞こえないかもしれない」という可能性を確認する方法はあるため、これからご紹介する方法を日常的に行い、気になることがあれば早めに動物病院を受診しましょう。
① 音への反応を確認
まずは、愛犬の音に対する反応を確認してみましょう。
確認するには以下のような方法があります。
背後から手を叩いてみる
愛犬の視界に入らない位置(背後)から、音を立ててみましょう。
振り向いたり耳を動かしたりする反応がなければ、耳が聞こえにくい・聞こえない状態の可能性があります。
食器の音で反応を確認する
ご飯の時間に食器をカチャカチャと鳴らしてみましょう。
以前ならすぐに反応していたのに、気づかないようなら注意が必要です。
インターホンや来客への反応を見る
インターホンや来客の気配に反応するかチェックしましょう。
以前は吠えていたのに、無反応であった場合は注意が必要です。
② 目で見える行動の変化を観察する
耳が聞こえていない場合、行動にも変化が見られることがあります。
以下のような様子が見られる場合は、耳が聞こえにくい・聞こえない状態の可能性があります。
| ・呼んでも反応しない ・背後から近づくと驚く ・寝ていても音で起きない ・インターホンや来客に気づかない ・吠える声が大きくなったり、吠える頻度が増えた ・飼い主の動きを常に目で追うようになった ・音の出るおもちゃへの興味が薄れた ・耳を動かさない など |
もちろん「たまたま」ということもありますが、これらの行動が継続的にみられたり、いくつも当てはまる場合には、早めに獣医師にご相談ください。
③ 他の感覚への依存が強まっている
耳が聞こえないと、犬は「嗅覚」「視覚」といった他の感覚に頼るようになります。
飼い主さんの動きを常に目で追うようになったり、においに対して敏感になる様子がみられるでしょう。
また、床の振動で起こるといったことも、聴覚に頼らなくなっているサインです。
犬の耳が聞こえないときに考えられる主な原因6つ

犬の耳が聞こえなくなる原因はさまざまで、なかには治療が必要なケースもあります。
そのままにしておくと悪化させてしまうこともあるため、原因を探って適切に対処してあげることが大切です。
ここでは、犬の耳が聞こえないときに考えられる主な原因を見ていきましょう。
① 加齢によるもの
加齢により、耳の神経や内耳の機能が少しずつ衰えて聞こえにくくなります。
これは「加齢性難聴」とも呼ばれ、加齢にともなって血流障害や酸化ストレスなどが加わり、音の振動を電気信号に変えて脳に伝えてくれる有毛細胞の機能が低下するためです。
② 異物によるもの
耳の中に異物が詰まっていると、耳道が塞がれて音が聞こえにくくなることがあります。
③外傷や打撲によるもの
強い衝撃や事故が原因で耳が聞こえなくなることがあります。
例えば、交通事故や高い場所からの落下、他の動物とのケンカなどで頭部を強く打った場合、耳の内部や聴覚神経、脳の聴覚野などの組織が損傷している可能性があるため注意が必要です。
④ 薬の副作用によるもの
一部の抗がん剤やループ利尿薬、抗菌薬など、耳に損傷を与える可能性(聴器毒性)のある薬が原因で、耳が聞こえにくくなることがあります。
病気の治療中で薬を服用しているときに犬の聴覚の異常が疑われる場合は、すぐに獣医師に相談することが大切です。
⑤ 病気によるもの
外耳炎や中耳炎、耳の腫瘍、甲状腺の機能低下、脳の疾患など、病気が原因で耳が聞こえなくなることもあります。
特に犬は外耳炎や中耳炎を起こしやすい耳の構造をしているため、定期的に動物病院での耳掃除や健康チェックを受けましょう。
⑥ 遺伝によるもの
生まれつき耳が聞こえなかったり、耳の内部が正常に発達しないことで耳が聞こえなくなることがあります。
被毛の色を決める遺伝子との関連が指摘されており、パイボールド遺伝子やマール遺伝子を持つ犬に起こりやすいようです。
耳が聞こえない犬のリスク
愛犬の耳が聞こえない状態になると、普段の生活でも注意してあげたいことがあります。
ここでは、耳が聞こえないことで起こりうるリスクについて解説します。
思わぬ事故の危険がある
犬の耳が聞こえないことで、思わぬ事故のリスクが高まります。
散歩中に車や自転車の接近音に気づかず事故につながったり、室内でも飼い主さんが後ろから近づいた際に、驚いて飛び上がり転倒してケガをしてしまったりすることもあります。
ストレスや不安が増加しやすい
もともと耳が聞こえない犬では、音のない世界が当たり前なのでストレスや不安を感じることはないでしょう。
しかし、音が聞こえる世界で暮らしていた犬は、耳が聞こえなくなることで周囲の状況がわかりにくくなり、ストレスや不安が強くなることもあります。
認知症のリスクが高まる

聴覚は脳に多くの刺激を与えていますが、耳が聞こえないことで脳の刺激が減り、認知症のリスクが高まることが分かっています。
実際に、2022年にアメリカで行われた犬の聴力と認知症の関連性の調査では、耳が聞こえない犬は中度〜重度の認知症である割合が高いことが報告されています。(※)
また、人間でも難聴(耳が聞こえにくい・まったく聞こえない状態)と認知症は関係があることが明らかになっており、耳が聞こえない犬は認知症への対策も重要です。
犬の認知症については、以下の記事もチェックしてみてくださいね⇩
|
動物介護士が解説|犬の認知症の症状は?予防や対策方法 |
|
動物介護士が解説|犬の認知症を治すことはできる?治療法やできるサポート |
耳が聞こえない犬への対処法
愛犬の耳が聞こえないときは、どんな対処をしてあげたら良いのかわからないという飼い主さんもいるでしょう。
安心して快適に過ごしてもらうためにも、日常生活に工夫を取り入れてあげることが大切です。
ここでは、耳が聞こえない犬へのサポート方法をご紹介します。
まずは動物病院を受診する
愛犬の耳が聞こえなくなった原因を特定するためにも、まずは動物病院を受診しましょう。
異物が入り込んでいるなどの場合であれば、異物を取り除いてもらうことで聞こえるようになる可能性があります。
また、病気が原因であれば適切な治療を受けさせてあげることで、耳の聞こえが改善される場合もあるでしょう。
加齢の場合、できることは限られてきますが、今後の生活の工夫を考えることができます。
アイコンタクトやジェスチャーを活用する
犬は耳が聞こえない分、目で情報をキャッチしています。
アイコンタクトや口の動き、手話(ハンドシグナル)、ボディランゲージなどを使うことで、コミュニケーションが取りやすくなり、愛犬も安心しやすくなります。
注意をひきたいときは、愛犬が好きなおやつなどを使用すると良いでしょう。
散歩は慣れたコースで安全に配慮して行う
散歩は犬の脳への良い刺激になるため、耳が聞こえなくても行いましょう。
安全のため、なるべく見通しのよい慣れたコースで行うのがポイントです。
リードは短く持ち、常に飼い主さんの姿が見える位置をキープしてあげてくださいね。
車が多く通る場所では、危険のないように抱っこをしたり、カートに乗せることも一案です。
認知症対策に役立つサプリメントを活用する

耳が聞こえにくい・まったく聞こえない犬は、脳への刺激が減ってしまい認知症のリスクが高まるため、認知機能の健康維持のために重要な栄養を効率よく補えるサプリメントを活用することをおすすめします。
| ■ 認知症対策におすすめの成分
・神経栄養因子様化合物(バングレン) |
現在は、さまざまな犬用の認知症対策のサプリメントが販売されていて、どれを選んだら良いか悩んでしまうこともあると思います。
そんな時は、動物病院での取扱いがあるようなエビデンスがある製品を選びましょう。
サプリメントは薬ではありませんが、脳機能の健康を保つことができる成分かどうか、また有効成分の配合量はそのサプリメントによって差があります。
製品の質は効果の実感にも直結するため、獣医師が患者さまに処方するような製品を選ぶことが、良い製品を選ぶための近道でしょう。
愛犬の体調に合った製品を、かかりつけの動物病院へご相談してみてくださいね。
まとめ

犬の耳が聞こえなくなる原因は加齢や病気などさまざまですが、早めに気づいてあげることが大切です。
また、犬自身、最初は耳が聞こえないことに戸惑ったり不安を感じることもあるため、しっかりとご家族が寄り添って、安心して過ごせるようにサポートしてあげましょう。
耳が聞こえなくても、目・鼻・振動など、他の感覚で豊かに暮らせるのが犬のすごいところです。
耳が聞こえないと悲観するのではなく、楽しく安心して過ごしてもらえる方法を考えてあげてくださいね。
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執筆者:高田(動物介護士)
