犬が体を傾ける原因は?考えられる病気と受診の目安を専門家が解説
愛犬が体を傾けて立ったり歩いたりしている様子を見て、びっくりしたのではないでしょうか。
犬が体を傾ける症状は珍しいものではありませんが、一般的に体のバランス機能に異常が起きているサインである可能性が考えられています。
実際に、私の高齢の愛犬も体を傾けることが見られ、慌てて動物病院に駆け込んだことがありました。
MRI検査を行い、重い病気ではないと診断されましたが、体を傾ける症状は原因を見分けるために精密な検査が検討されることもある症状なのです。
そこでこの記事では、犬が体を傾ける原因や病気、動物病院を受診する目安について解説します。
| 執筆者:高田 【保有資格】 動物介護士、CPD認定 Canine Cognitive Dysfunction(CCD) 修了、ホリスティックケア・カウンセラー ほか |
そもそも犬が体を傾けるってどういうこと?平衡感覚にトラブルが起きているサイン
※体を傾ける愛犬
犬が片側に体を傾けて立つ、歩くとふらつく、頭が斜めのままになる、このような状態を「斜頸(しゃけい)」と呼びます。
斜頸は特定の病名ではなく、姿勢の異常を表す状態名です。
犬は、耳の奥にある内耳、そこから脳へつながる神経、そして脳そのものが連携することで、体の向きや傾きを常に調整し、真っ直ぐ立ったり真っ直ぐ歩くといった動作が保たれています。
この仕組みのどこかに異常が起こると、左右の情報にズレが生じ、犬はまっすぐ立っているつもりでも体が片側へ引っ張られるように傾いてしまうのです。
写真の私の愛犬の場合は、座っているときも体が傾いてしまっているのがお分かり頂けるのではないでしょうか。
これは、体の平衡感覚にトラブルが起きているサインです。
犬が体を傾ける原因は一つではなく、さまざまな要因によって起こります。
なお、体全体が傾いている場合と、頭だけが傾いている場合では、疑われる原因が異なることがあります。
頭の傾き(斜頸)は平衡感覚の異常や首の痛みで見られることがあり、体ごと傾く場合は姿勢を保つ機能の低下や神経の異常が関係していることも少なくありません。
犬が体を傾けるのはなぜ?考えられる主な5つの原因
犬が体を傾ける症状は、特定のひとつの病気で起こるわけではありません。
体のバランスに関わるさまざまな部位の異常によって起きています。
ここでは、犬が傾けるときに考えられる主な5つの原因・病気について見ていきましょう。
①前庭疾患(前庭系の異常)
犬が体を傾けるときにまず疑われるのが、前庭疾患です。
前庭疾患は、体の傾きやふらつきなど、平衡感覚の異常によって起こる一連の症状を指します。
前庭疾患では、まっすぐ立っているつもりでも姿勢を保てず、体が傾いたり、ふらついて歩いたりする様子が見られます。
また、体の傾きに加えて、同じ方向に回り続ける、立ち上がりにくい、目が小刻みに揺れる(眼振)、吐き気やよだれ、食欲低下などが見られることも珍しくありません。
②耳のトラブル(中耳炎や内耳炎)
中耳炎や内耳炎も、体を傾ける症状の原因のひとつです。
平衡感覚に直接関わるのは内耳ですが、中耳と内耳は鼓膜の奥で近い位置にあり、中耳の炎症がさらに耳の奥へ広がることで、バランスを感じ取る部分に影響してしまうこともあります。
中耳炎や内耳炎は外からは分からないことも多く、耳の検査が必要になることも少なくありません。
外耳炎が悪化することで中耳炎へ進むこともあるため、注意が必要です。
③脳や神経の異常(脳炎・腫瘍・血管障害など)
脳や神経に異常が起きた場合も、体のバランスをうまく保てなくなり、体を傾ける症状が見られることがあります。
嘔吐が続く場合や、けいれん、力が入りにくい様子が見られるなど、体を傾ける以外に異常な行動が見られる場合は注意が必要です。
ただ、耳の奥から脳へは前庭神経がつながっているため、似たような症状が見られることも珍しくありません。
そのため、耳の病気による平衡感覚の異常なのか脳の病気によるものなのかは、検査をして初めて区別できるということもあります。
④中毒や外傷
犬が体を傾ける症状は、有害な物質の誤食や頭部の打撲や転落、交通事故などの外傷でも見られることがあります。
たとえば、高い所から落ちた、家具に強くぶつかった、薬品や観葉植物、チョコレートなどを口にしたといった場合は注意が必要です。
⑤加齢による機能の低下
高齢犬では、筋力や感覚機能の低下により姿勢を保つ力が弱くなり、体が傾いて見えることがあります。
ただし、頭が一定方向に傾いたままになる場合や、急に症状が現れた場合は加齢だけが原因とは限りません。
また、体のバランスの異常ではなく、痛みをかばう姿勢として体や首が傾いて見えることもあります。
実際に、愛犬は首を傾けていたこともありましたが、そのときは頸椎ヘルニアがあることがわかりました。
触られるのを嫌がる、抱き上げると鳴く、下を向きにくい、動きたがらないといった様子があるときは、整形外科的な痛みの可能性も考えられますよ。
犬が体を傾けるときに動物病院を受診する目安
愛犬に体を傾ける症状が見られた場合は、程度に関係なく一度は動物病院を受診しましょう。
体の傾きは耳・神経・脳・外傷など複数の原因で起こり、見た目だけで判断することはできません。
特に、以下のような様子が見られる場合は、早急な受診が必要です。
- 立てない、歩けない、倒れてしまう
- けいれんを起こす
- 意識がはっきりしない
- 呼びかけへの反応が鈍い
- 激しく吐く、水が飲めない
- 片側の手足に力が入らない、麻痺がある
- 頭を打った、事故や誤食の可能性がある など
これらの症状は、脳や神経の異常、中毒、重い前庭障害などが関係している可能性があります。夜間や休日であっても、対応している動物病院へ相談してください。
また、症状が軽く見えても、初めて体の傾きが見られた場合は原因を突き止めておくことが大切です。
自己判断で経過を見るのではなく、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
犬が体を傾けるときに自宅でしてあげられるケア
犬が体を傾けるときは、動物病院での診察や治療が基本となりますが、自宅でできるサポートもあわせて行うことで犬の負担を軽減してあげられます。
ここでは、自宅でしてあげられるケアについて見ていきましょう。
転倒を防止する
滑りやすい床は転倒の原因になるため、フローリングには滑り止めマットやカーペットを敷いてあげましょう。
家具の角や硬い物にぶつかりそうな場所も、クッションなどで保護しておくと安心です。
体が傾いていると、人間が思っている以上に犬はバランスを取ることができません。
この状態で転倒すると、頭を打ったり、首や背中を痛めたりする恐れがあるため、愛犬の安全を守るためにも転ばない環境を整えてあげることが大切です。
食事のサポートをする
体が傾いていると頭の位置が安定せず、器に顔を近づける動作だけでも負担になるため、食事のサポートをしてあげましょう。
器の高さを愛犬の口元に合わせる、滑りにくい場所に置く、少量を複数回に分けて与えるなど、無理なく食べられるように工夫してあげることが大切です。
食べる姿勢が不安定な場合は、体を軽く支えてあげるといいでしょう。
食べられない状態が続くと体力が落ち、筋肉が減ることでふらつきが強くなりやすくなります。
さらに水分不足になると回復が遅れてしまうこともあるため、犬の負担にならない範囲で食事を摂らせてあげることが大切です。
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夜間の対策をする
暗い環境では周囲の位置が分かりにくくなり、転倒したりぶつけてしまうことがあるため、夜間も犬が安全に移動できるように足元が分かる程度の明かりをつけておきましょう。
また、水やトイレを寝床の近くに置き、移動距離を短くしておくと負担を減らすことにつながります。
できれば段差にはスロープをつけたり、階段には近寄れないようにしておくとより安心です。
犬が体を傾けるときに意識したい栄養
体の傾きが見られる犬では、食欲低下や活動量の減少により栄養が不足しやすくなります。
特に老犬では、脳や神経の健康維持を意識した栄養素を取り入れてあげることが大切です。
| 【脳や神経の健康維持に摂取したい栄養素】
・ポリフェノール(アントシアニン、グネチンCなど) |
脳や神経は、体の中でも酸化ストレスの影響を受けやすい組織です。
脳は多くのエネルギーを消費して酸素をたくさん使ううえ、神経細胞の膜は脂質を多く含むため、酸化の影響を受けやすいという特徴があります。
そのため、ビタミン類やポリフェノール、カロテノイドなどの抗酸化に関わる成分は、意識して取り入れたい栄養素といえます。
脳の健康維持におすすめのサプリメント
私も高齢の愛犬に、グネチンCとバングレンが配合された「トライザ」というサプリメントを与えていました。
トライザに含まれるグネチンCはポリフェノールの一種で、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)活性に関与する成分です。
また、バングレンは、記憶力・学習力の維持に深く関わり、脳の神経幹細胞の分化・成長に深く関与する成分として、近年注目を集めています。
トライザは、脳や認知機能だけでなく、からだ全体の健康維持のサポートが期待できるため、一度は試してみてほしいサプリメントです。
動物病院での取扱いもあるため、気になる飼い主さんはかかりつけの獣医師に相談してみるといいでしょう。
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犬が体を傾けるときによくあるQ&A
ここでは、犬が体を傾けるときによくある疑問について解説します。
Q.散歩をしても大丈夫?
A.基本的には安静が望ましいため、しばらく散歩は控えましょう。
外でしか排泄しない犬では短距離にとどめたり、抱っこやハーネスで体を支えるなど、安全に配慮しながら短時間で行うことが大切です。
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Q.どれくらいで治る?
A.犬の体を傾ける原因によっても異なりますが、数日で落ち着くこともあれば、数週間や数ヶ月かかることもあります。
症状が軽くても重篤な病気の可能性もあるため、自己判断で様子を見るのではなく、動物病院を受診することが大切です。
Q.後遺症はある?
A.原因によっては、軽い傾きが残ることもあります。とはいえ、日常生活に支障がない程度まで落ち着くことも多いのです。
ただし、再びふらついたり体を傾ける症状が見られるようになったときは、動物病院を受診してください。
まとめ
犬が体を傾けるのは、体のバランスが崩れているサインである可能性があります。
原因は一つではなく、見た目からは判断できないことも多いため、愛犬に体の傾きが見られる場合は、まず動物病院を受診することが大切です。
愛犬の体が傾いていると、心配や不安でパニックになりがちですが、落ち着いて冷静に対応しましょう。
また、日常のケアで、愛犬が少しでも快適に過ごせるようにサポートしてあげてくださいね。
