動物介護士が解説|老犬が起き上がれないときに考えられる原因や対処法
老犬になった愛犬が起き上がれないでいる様子を見て、どうしてあげたらいいか悩んでいるのではないでしょうか。
老犬が起き上がれないときは深刻な病気が隠れていることもあり、適切に対処してあげることが大切です。
そこで今回は、高齢の愛犬4匹と暮らしていた動物介護士の私が、老犬が起き上がれないときに考えられる原因や対処法について解説します。
対策についてもご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
【執筆者保有資格】
動物介護士、ペットフーディスト、犬の管理栄養士 他 |
老犬が起き上がれないときに考えられる原因4つ
老犬が起き上がれないときは、さまざまな原因が考えられます。
特に、急に起き上がれないという場合は病気が原因であることも多く、注意が必要です。
最初に、老犬が起き上がれないときに考えられる原因について見ていきましょう。
① 加齢により筋力が衰えている
老犬が起き上がれない原因のひとつに、加齢による筋力の衰えがあります。
この場合、歩くスピードが遅くなってきたり積極的に走らなくなる、段差が苦手になる、散歩中に立ち止まることが増えるなどの運動能力の低下が普段から少しずつみられるでしょう。
老犬になると後ろ足から筋肉が落ちていき、それにともなって筋力も低下します。
犬は体重を支えるために4本の足が必要ですが、後ろ足の筋力が低下することで踏ん張れなくなり、起き上がりや立ち上がりが困難になります。
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② 関節に痛みがある
老犬が起き上がれない原因が、関節の痛みによる場合もあります。
老犬は筋肉の柔軟性の低下や関節を構成する軟骨などの組織の老化、活動性の低下などにより関節の可動域が狭くなりますが、無理に可動域を広げようとすると痛みが生じることがあります。
また、関節炎や変形性関節症、関節リウマチなどの関節の病気も痛みをともない、起き上がりたくても痛くて起き上がれないということが起こります。
③ 椎間板ヘルニアを患っている
椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にあるクッションのような働きをする椎間板が変性し、神経を圧迫する病気です。
痛みや麻痺を引き起こすため、後ろ足が踏ん張れずに起き上がれないということがあります。
なお、椎間板ヘルニアは腰のイメージが強いかもしれませんが、首で起こることもあり、その場合は前足に力が入らなくなります。
椎間板ヘルニアは、「進行性脊髄軟化症」という命にかかわる合併症を起こす可能性もあるため、軽視しないことが大切です。
④ 脳に関わる病気を患っている
起き上がりとは関係がなさそうにも思えますが、老犬が脳に関わる病気を患っていることも考えられます。
脳に関わる病気には、脳梗塞や脳腫瘍、脳炎、水頭症、てんかん、前庭疾患などがあり、脳の機能に影響を与えることから、運動機能障害を起こして起き上がれないということがあります。
脳の病気では、震えやけいれん発作、首の傾き(斜頸)、眼振などの症状が見られることもあるため、これらの症状が見られたらすぐに動物病院を受診しましょう。
犬のてんかん発作については、以下の記事で詳しく解説しています⇩
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老犬が起き上がれないときの対処法
前章で解説したように、老犬が起き上がれない原因は多岐に渡ります。
では、老犬が起き上がれないときはどう対処してあげたら良いのでしょうか。
ここでは、対処法について見ていきましょう。
動物病院を受診する
老犬が起き上がれないときは、まず動物病院を受診しましょう。
起き上がれなくなってしまった原因が、加齢によるものなのか病気によるものなのか、飼い主さんが判断することは難しいものです。
また、老犬が起き上がれないような状態になってしまったときは深刻な病気が原因の可能性も高く、早急に動物病院を受診することが大切です。
できれば、起き上がれない様子を撮影して獣医師に見てもらうと、診断のサポートになります。
マッサージをしてあげる
寝ている時間が多いと老犬の関節や筋肉がこわばり、更に起き上がりにくくなります。
優しく足をさすってあげたり、関節の曲げ伸ばしをサポートしてあげるなど、簡単でいいのでマッサージをしてあげましょう。
ただし、すでに関節に痛みを抱えている場合では、関節を動かすのではなく足先をマッサージして血行を維持したり温めてあげるようにします。
また、散歩の前などにマッサージを行ってあげると足を動かしやすくなり、歩く負担を軽減することに役立ちます。
なお、病気によってはマッサージをしたり関節の曲げ伸ばしをしないほうが良い場合もあるため、必ず獣医師にご相談くださいね。
老犬の睡眠時間については、以下の記事もチェックしてみてくださいね⇩
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起き上がれないで“もがく”場合などは、起き上がりを補助してあげる
老犬が起き上がれないときや、起き上がろうと“もがく”時は、支えるなどして起き上がりを補助してあげましょう。
近年は上半身用介助ハーネスや下半身用介助ハーネスなども販売されており、歩行の補助だけでなく起き上がりに使用することもできます。
また、踏ん張りがきかなくて起き上がりきれない場合などは、滑り止めの付いている靴下や靴を活用するのがおすすめです。
室内環境を整えてあげる
老犬の起き上がれない原因が、フローリングなどの滑りやすい床で余計に力が入れにくくなっているということもあります。
タイルカーペットやコルクマットなどを敷いて、滑りにくい床にしてあげましょう。
なお、滑りやすい床は足腰に負担をかけるため、関節炎や椎間板ヘルニアなどの発症リスクが高まります。
足腰への負担を軽減してあげるためにも、滑りにくい床にしてあげることをおすすめします。
老犬が起き上がれない場合の対策4つ
老犬が起き上がれない原因はさまざまですが、加齢による筋力低下が起こっているケースが多くみられます。
また、寝たきりにならないようにするためにも、気になった早い時点でこれからご紹介する対策をしてあげましょう。
① 筋トレを行う
加齢による筋力の低下はある程度仕方がないことですが、無理のない範囲で筋トレを行うことで、筋力をつけたり筋力の低下を軽減することができます。
もちろん、老犬が成犬時のような筋力になることはありませんが、今の状態を少しでも改善できたり、残っている筋力を維持することに役立ちます。
弾力性のある柔らかいものの上を歩いてもらうと、適度に負荷がかかって筋トレとなります。
散歩では砂や土の上、室内ではクッションやマットレス、洗濯物の上などを老犬に歩いてもらうようにしましょう。
老犬の散歩や筋トレの方法は、以下の記事で詳しく解説しています⇩
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② 食事管理を行う
老犬は代謝が落ちて太りやすくなりますが、肥満は足腰に負担をかけやすく、起き上がれない原因になりやすい関節炎や椎間板ヘルニアの発症リスクが高くなります。
そのため、肥満にならないように適切な食事量に見直すことが大切です。
また、おやつやトッピングを与える場合は、その老犬が一日に必要なカロリーのうちの20%以内にとどめ、そのカロリー分の食事量を減らすようにしましょう。
一日に必要なカロリーは、その老犬の状態や体型、避妊・去勢手術の有無でも異なります。
一度、かかりつけの動物病院でどれくらいのカロリーが必要か獣医師に確認することをおすすめします。
老犬の給餌量やカロリーの計算については、以下の記事をご覧ください⇩
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③ 筋肉をつくるための食事内容にする
筋肉量を増やしてあげることで筋力も向上するため、筋肉を作ったり維持するために、良質なタンパク質が適度に含まれている食事にしましょう。
基本的に、老犬は成犬時よりも多くのタンパク質を必要とします。
(タンパク質を制限する必要があるケースもあります)
タンパク質は身体をつくるために欠かせない栄養素で、少なすぎれば筋肉量の減少や免疫力の低下、身体の冷えの誘発、皮膚・被毛トラブルなど、さまざまな影響があります。
もちろん、タンパク質量が多すぎても内臓に負担がかかるケースもあるため、ドッグフードを選ぶときは今までと同じ程度か、数%高いタンパク質量のものを選ぶと良いでしょう。
老犬のドッグフードの選び方については、以下の記事もチェックしてみてくださいね⇩
専門家が解説|老犬のドッグフードの選び方は?押さえておきたいポイント6つ |
④ サプリメントでサポートする
老犬が起き上がれなくなる原因はさまざまですが、サプリメントでサポートしてあげることも検討してみましょう。
サプリメントは、関節に必要な栄養を補ってあげるものや筋肉量の減少をサポートしてあげるものがおすすめです。
■ 関節や筋肉の健康をサポートする主な成分 【関節】 【筋肉】 |
犬用のサプリメントはさまざまなものが販売されていますが、どんなものが良いのか迷ってしまう場合には、動物病院で取扱いがあるようなエビデンスがあるものを選びましょう。
まとめ
老犬が起き上がれない場合、加齢によって筋力が低下していることだけでなく、さまざまな病気の可能性があるため注意が必要です。
老犬になると、さまざまな病気のリスクが高まります。
普段からよく観察し、異変を感じたときは些細なことでも獣医師にご相談ください。
また、老犬のQOL(生活の質)を維持してあげるためにも、できる対策をどんどん取り入れていきましょう。
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執筆者:高田(動物介護士)