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老犬が笑わなくなった…笑顔を取り戻すためにできること|動物介護士が解説

目次

愛犬が老犬になり、以前より笑わなくなったと感じている飼い主さんは少なくありません。

その変化に、寂しさや不安を覚えることもあるのではないでしょうか。

犬の笑顔は、口元がゆるみ目が穏やかになるなどやわらかな表情で、見ているだけで幸せな気持ちにさせてくれますね。

しかし、老犬になると体調や気分の変化から表情が乏しくなることがあります。

それは老いのサインのひとつであることもありますが、病気などが原因の場合もあり、しっかり見極めてあげることが大切です。

そこで今回は、高齢犬たちと暮らしていた動物介護士の私が、老犬が笑わなくなる理由や笑顔を取り戻すためにできるケアについて解説します。

 【執筆者保有資格】
動物介護士、ペットフーディスト、犬の管理栄養士 他

 

老犬が笑わなくなったのはなぜ?考えられる主な理由4つ

老犬が笑わなくなると、まず思うのは「年だから仕方がないのかな」ということではないでしょうか。

確かに加齢によって「笑う」ということは減りやすいですが、それだけではない場合もあります。

最初に、老犬が笑わなくなる主な理由を知っておきましょう。

 

① 加齢による身体の変化

老犬が笑わなくなる理由のひとつに、加齢による身体の変化があります。

犬も年齢とともに筋肉量が減少していきますが、それは顔の筋肉(表情筋)にも及ぶものです。

表情筋が衰えることで、口角を自然に引き上げる力が弱まり、以前のような笑っているようなやわらかい表情が出にくくなります。

さらに、犬は被毛に覆われているためわかりにくいですが、加齢による皮膚のたるみも表情に影響するため、余計に「笑っていない」と感じやすくなるのです。

 

② 痛みや身体の不調がある

老犬が笑わなくなったときは、痛みや身体の不調を抱えてることも考えてあげる必要があります。

犬はどこかに痛みや不調があると、行動に変化が見られやすくなるだけでなく、表情も乏しくなりがちです。

特に変形性関節症は、8歳以上の犬の約40%にその兆候が見られると報告されるほど身近な疾患で、継続的に続く痛みによるストレスや不快感によって表情にも影響を及ぼすことがあります。

ほかにも、老犬は心臓や腎臓、消化器などの内臓疾患のリスクも高く、内臓の不調が笑顔の減少につながっている場合も少なくありません。

 

③ 認知症を発症している

老犬が笑わなくなる理由として、痛みや身体の不調だけでなく、認知症が関係していることもあります。

初期症状は「なんとなく元気がない」「ぼーっとしている」など曖昧で、見逃されやすいのが特徴です。

犬の認知症は10歳頃から発症リスクが高まり、発症すればどんどん進行していき、完治することはありません。

認知症が進行すると、感情の起伏が乏しくなったり、周囲への反応が鈍くなったり精神的な活力が低下するため、表情にも変化が現れます。

その結果、笑わなくなったと感じることが増えてくるのです。

犬の認知症については以下の記事もチェックしてみてくださいね⇩

 動物介護士が解説|犬の認知症の症状は?予防や対策方法

 

④ 心の変化やストレス

老犬は加齢による変化から不安やストレスを感じやすくなり、笑う余裕がなくなることがあります。

犬もヒトと同じように、シニア期に入ると、視力、聴力、筋力、認知機能など、さまざまな機能が徐々に衰えていきます。

できていたことができなくなる、自分のニオイが変わる、環境に過敏になるといった日常の違和感は、老犬自身も戸惑いを感じるものです。

それが不安やストレスとなり、表情にも影響することがあります。

【関連記事】

 老犬になると不安を感じやすくなる!不安なときの行動や和らげる方法
 動物介護士が解説|犬の目が見えない?視力低下のサインやリスクと対処法

 

老犬の笑顔を取り戻すためのケア方法

老犬が笑わなくなってしまう理由はさまざまですが、できることを少しずつ積み重ねることで表情がやわらぐことがあります。

ここでは、老犬の笑顔を取り戻すためのケア方法についてご紹介します。

 

まずは動物病院を受診する

老犬が笑わなくなったときは、重大な病気が隠れている可能性もあるため、まずは動物病院を受診しましょう。

また、老犬になると定期的な健康チェックは欠かせません。

半年に1回は健康診断を受けることをおすすめします。

 

適度なスキンシップとコミュニケーション

老犬の心をほぐし、安心感を与えるためにはスキンシップや声かけが有効です。

「手当て」という言葉があるように、人のぬくもりには不安を和らげる力があるとされ、実際に犬を撫でるとオキシトシン(愛情ホルモン)が分泌されることがわかっています。

また、加齢によって耳が遠くなり、呼びかけても反応が薄いこともありますが、これまでどおり優しく話しかけてあげることも大切です。

たとえ聞こえていなくても、飼い主の想いや気配はしっかりと伝わっています。

【関連記事】

 愛犬の耳が聞こえない?確認方法や原因・対処法を動物介護士が解説

 

食事を工夫してあげる

愛犬の好きなおやつや嗜好性の高いフードを取り入れ、食事の時間を楽しんでもらいましょう。

老犬は食欲が落ちたり、食への関心が薄くなったりすることもありますが、香りが強いものは興味を示してくれることもあります。

実際、私の高齢の愛犬(享年18歳)は、豚肉や牛肉を焼いたものを少量あげると嬉しそうに食べていました。

食べる楽しみが増えれば、表情にも明るさが戻りやすくなります。

老犬がご飯を食べないときの対処法については、以下の記事で詳しく解説しています⇩

 動物介護士が解説|老犬が食べないときに試してほしい8つのこと

 

適度な運動をさせてあげる

適度な運動は老犬の心身に良い影響を与え、自然な表情につながりやすくなります。

軽い散歩やストレッチなどの運動は、筋肉や関節の機能が維持しやすくなるのはもちろん、気分転換やストレス軽減にも欠かせないものです。

また、運動することで幸せホルモンの「セロトニン」や「オキシトシン」の分泌も促されるため、リラックス効果も期待できます。

老犬の散歩については、以下の記事もチェックしてみてくださいね⇩

 動物介護士が解説|老犬が散歩を嫌がるときはどうする?回数や時間の目安も


快適な生活環境にしてあげる

老犬が安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。

体への負担を軽減するために体圧分散できるマットやベッドを用意する、落ち着ける場所を確保してあげるなど、環境面でのサポートも欠かせません。

また、室温や湿度の管理も重要です。

 ■ 老犬が快適に過ごせる室温・湿度の目安
室温…25度前後
湿度…50%程度

老犬は寒さや暑さに弱いため、快適に過ごせるようにしてあげることが表情の変化にもつながります。

 

サプリメントを検討する

認知症などが原因であることも視野に入れ、サプリメントも検討しましょう。

犬の脳ケア用サプリメントは、まだ認知症ではない老犬にも認知機能の健康を保つという点でおすすめです。

 ■ 脳ケアにおすすめの成分

・ポリフェノール(アントシアニン、グネチンCなど)
・カロテノイド(アスタキサンチン、ルテイン、β‐カロテンなど)
・神経栄養因子様化合物(バングレン
・オメガ3脂肪酸(DHA、α-リノレン酸など)
・ビタミンA、C、E など

実際、私は笑わなくなった愛犬にグネチンCとバングレンが配合されたサプリメントを継続的に与えていたところ、嬉しい実感がありました。

愛犬に合ったサプリメントを選ぶことができれば、穏やかな日々を支えることに役立ってくれるでしょう。

脳ケア用サプリメントはたくさん種類がありますが、動物病院で取り扱いがあるようなエビデンスがあるものを選ぶことをおすすめします。

 【犬用サプリメント】トライザの口コミ評判は?定期購入してわかったメリット・デメリットも紹介!

 

飼い主さんが心がけたいこと

老犬との暮らしは、一喜一憂することも多いですね。

愛犬のことを想うからこそ、つい力も入ってしまいがちですが、老犬との暮らしでどんなときにも覚えておいてほしい心構えをお伝えします。

 

無理に笑顔を求めない

無理に笑顔を求めないようにしましょう。

愛犬に笑ってほしいと願うことは自然なことで、笑顔が見られないと不安になるのは「幸せなのかな」「喜んでくれているのかな」ということがあるのではないでしょうか。

しかし、笑顔がないから幸せではないというわけではありません。

些細な表情の変化や、自然な表情が出る瞬間を大切に見守ってあげることが大切です。

老犬の幸せについては、以下の記事もご覧ください⇩

 犬の幸せとは?老犬の飼い主さんに知っておいてほしい「老犬の十戒」をご紹介

 

老犬のペースを尊重する

老いは誰にでも訪れるものです。
加齢による変化を受け入れ、寄り添い、愛犬のペースを尊重してあげましょう。

老いていくことはマイナスなことではありません。
若い頃とは違う表情やしぐさのひとつひとつが「今」しかないかけがえのない時間です。

穏やかな日々に感謝し、愛情を伝え続けることが大切です。

 

小さな喜びを見つける

ごはんを完食した、目が合った、ちょっとしっぽが動いたなど、笑顔だけに捉われず小さな喜びを見つけましょう。

愛犬が笑ってくれなくても、愛犬との時間は何にも変えられない宝物です。

一緒に過ごせる時間そのものを楽しむ心持ちが大きな支えになるでしょう。

 

まとめ

老犬が笑わなくなったとき、飼い主として寂しい気持ちになるのはごく自然なことです。

実際、私も高齢の愛犬の笑顔が消えたとき「愛犬は幸せなのかな」「どうしたら喜んでもらえるかな」と何度も何度も考えました。

愛犬の場合は認知症が原因でしたが、ほんの一瞬でも再び笑顔が見られるようになったときは、涙が出るほど嬉しかったことを今でもはっきり覚えています。

老犬が笑わなくなる原因はさまざまなので、必ずしも以前のような笑顔が戻るとは限りません。

老犬の変化を受け入れながらその子のペースに寄り添い、今できるケアや環境づくりを続けていくことが何よりの愛情です。

思いつめたり無理をし過ぎず、愛犬と穏やかな時間を過ごしてくださいね。

 

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執筆者:高田(動物介護士)

 

<参考文献>
WSAVA「2022 WSAVA guidelines for the recognition, assessment and treatment of pain」
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsap.13566

AAHA「AAHA 2023 Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」
https://www.aaha.org/resources/2023-aaha-senior-care-guidelines-for-dogs-and-cats/

The Veterinary Jounal「Prevalence of osteoarthritis in the shoulder, elbow, hip and stifle joints of dogs older than 8 years」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090023324000716?utm_source=chatgpt.com